書評
ロコトレ
ロコモ・トレーニング

  歳を取ると、立つ、坐る、歩くなど日常動作に支障をきたすようになる。誰でもそうなると思っている人は多い。しかし、三浦雄一郎さんが立証したように、80歳でも鍛えればエベレストに登れる体を維持することもできる。大いに刺激を受けた人もいることだろう。
 しかし、何もエベレストに登れるほどの体力は一般的には必要とせず、それだけ大変なトレーニングもする必要はない。むしろ、何歳になっても自分の足で歩き、文字通り立居振舞が支障なくできればまずは困らない。それは可能なことであるはず。
 この本はロコモティブシンドロームという、膝、股関節、足関節という「移動(ロコモーション)」に必要な運動器、また荷物を持って歩くなど、上肢の運動器に痛みなどが生じ、そのままでは要支援、要介護になる可能性が高い状態に陥ったときの対応を丁寧に記したものである。
 膝が痛い、腰が痛いなど、加齢とともにどこか不調が生じてくる。「そのときがチャンス」と著者は言う。そこで何もせず、受け身の治療だけを続けていても、なかなか症状は改善しない。むしろ、みずから動くことで改善していく。
 著者は、ひじまる体操やかべスクワット、ワイパー体操など、多くの体操を考案、臨床でも地域の健康教室でも指導を続けている。痛みを抱えていた人が今では元気に山登りをしているという例も珍しくはない。
 紹介されている体操はみな難しくない。頑張る必要もない。しかし、起床後、食事前、トイレに行ったときなど、毎日1回の回数は少なくても、頻度高く行うほうがよいと言う。
 著者は「美立健康協会」という一般社団法人を設立、「美しく立つ」「上手なからだの使い方」をコンセプトにこの本で紹介されている体操をはじめ各種の体操を指導している。本書はその中でも「かべ体操」を中心にまとめられたもの。かべスクワット、そこからのヒールレイズ、トウレイズ、ストレッチになるかべこんにゃく体操、かべ押し、かべ叩き、寝てかべ押しなど、豊富なメニュー。
 かべはどこにでもある。お金もかからず、元気にすごせる体操の宝庫がこの本。日々生活に取り入れ、「美しく立つ」ことを何歳までも続けたいものである。
(清家)



ロコトレ
渡會公治 著
新書判 176頁
952円+税
アスコム
2013年6月7日刊

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