書評
ランニング医学大事典

 原書名は “Textbook of Running Medicine” 、2011年McGraw-Hillから刊行された。そのわずか2年後に翻訳されたのは、この本の緻密にして膨大な内容からして快挙とも言うべきであろう。
 編者はFrancis G. O'ConnorとRobert P. Wilder、これにSurgical Section EditorとしてRobert Nirschiが加わり、さらに87人の著者群によってまとめられた640頁の「大事典」の名にふさわしいもの。訳者27人、監訳者2人というこちらも大翻訳陣ということになる。
 表紙に上半身は裸で苦しそうに走るランナーの写真がある。心臓病の専門医でランナーのジョージ・シーハン(George Sheehan)である。シーハンはその著書でも知られるが、1972年に出された “The Encyclopedia of Athletic Medicine” はわずか96頁しかなかったが、ランニング障害の原因と予防を始め、ランニング医学の本としては最初の教科書であった。その最初には「アスリートは、健康医学に新しい次元をもたらした」と記されていたそうだ。
 序文で、このことを紹介したティモシー・ノークスは、「シーハンはどれほど本書を読みたかったことだろう」と記し、こう続ける。「シーハンの本は、新しい医学的な考えを直接ランナーに届けたいという彼の希望から生まれた。本書もまた、すべてのランナーの医療担当者に最適なケアを行うために必要な最良の情報を提供できるときがきたという著者らの関心から始まっている」。
 全体は、「一般的考察」「ランナーの評価」「一般的なランニング障害」「内科的問題」「特別な考察」「リハビリテーション」「手術の考察」の7部だて、全55章からなる。その詳細は版元の西村書店のHPあるいは添付のAmazonのHPを参照していただきたいが、監訳者の福林氏が「今回翻訳された本書は正にランナーに対して、そしてランナーをケアするドクター、理学療法士、トレーナーにとっての『成書』いや現在における『聖書』に値すると言える」(監訳者序文より)と評価するのもうなずける内容である。
 現在、これ以上のランニングに関する医学書はないだろうと思わせられ、原書名 “Textbook of Running Medicine” がいかに自信に満ちたものかがわかる。
 さらに詳細な文献にあたりたい人には、著者が推奨する文献が記されていて、研究を深めたい人へのよい情報になっている。
 640頁、厚さ5cm。ランニングとランニング医学への情熱が詰まった本である。(清家輝文)


ランニング医学大事典
編著:F.G.オコナー
編著:R.P.ワイルダー
監訳:福林徹、渡邊好博
B5判 640頁 ハードカバー
9,500円+税
西村書店
2013年10月1日刊
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