MMSSM スペシャル

Special-1
ファッション界の新星
その注目すべき
Body and Mind感覚


Parsonsを卒業し活躍中のデザイナー、小西里佳さん


Konishi Rika
ニューヨークで活動する
ファッションデザイナー
Rika Konishiさん

 ファッション界のMIT(マサチューセッツ工科大学)と称されるニューヨークのParsonsを卒業した日本人デザイナー、小西里佳さん。父親が日本人、母親が中国人で日本語のほかに英語、中国語をこなす。フロイトに興味を持ち、ユニセックス、ジェンダーレスのファッションで話題を呼び、アメリカのファッション誌「fuckingyoung」「WWD」「YOKO Mag」や中国の「上海画報」などでもその作品は大きく取り上げられている。

RIKA

 小西里佳さん、ここではRIKAさんと記すことにしよう。そのほうがニューヨークを拠点に活躍する姿に合っているからだ。では、そのRIKAさん、どのようにして現在に至るのか、そのプロフィールを簡単に紹介しておこう。
 RIKAさんは、1994年生まれの24歳。ニューヨーク在住のファッションデザイナーである。2010年に上海のインターナショナル中学校を卒業後、大阪の関西学院千里国際高校に移り、2013年に卒業、同年からニューヨークのファッション界の名門大学Parsonsで学び、昨年卒業(ファッションデザイン専攻)。ニューヨークブランドの「Baby ghost」や日本ブランド「IKUMI」のモデルも務めた。
 RIKAさんの卒業作品は、2017年開催のParsons大学BFAコレクションに(Parsons BFA fashion benefit show 2017)展示され、優秀作品賞を受賞、また2017年ニューヨークで開催された“PROJECT”Menswear tradeのコレクションに優秀作品として展示された。

RIKAさんの作品とフロイト

 上記のように各方面から注目されたRIKAさんの卒業作品のタイトルは「無言」であり、「孤独、恐怖、怒りといった人間が持つ様々な抑えられた感情の移り変わりを表現し、人間の心理に焦点を当てた作品」である。その作品のインスピレーションの源はRIKAさんが好きな心理学者、ジークムント・フロイトの言葉「表現されていない感情は決して死んでいない。生きたまま埋められて、より醜い方法で現出する(“Unexpressed emotion will never die, they are buried alive and will come forth later in uglier ways.”)」にある。
 そこから「服と感情はどう相互の束縛を解放するか、形にない感情をどう自らの表現に投影していくか、抑えている感情が自然に表にでてくるような作品の生地をSlashingというユニークな方法で開発しました」。
 実際の作品は「日本で生地を調達し、綿、麻、絹等素材の生地をSlashingの方法で再加工処理し、作った生地は洗浄のたびに変色反応をして、洗浄後には隠されていたものが予想もできない変色で現出します。それは人間の抑えていた感情が自然に解放されたような感じなのです」と言う。その魅力的な生地を使ってデザインされたのが卒業作品なのだ。


RIKAさんが開発したSlashingという手法


RIKAさんの卒業作品、「フロイト」と「ユニセックス、ジェンダレス」がつながる世界

INTERVIEW:RIKAさんに聞く

そういうRIKAさんにいくつか聞いてみた。

――なぜParsonsでファッションを学ぼうと思ったのですか?

RIKA:私は、小学生頃からファッションに興味を持っていました。Parsonsは世界的な有名なファッションデザイン大学でAnna Sui 、Alexander Wang 、Jason Wu 、Yohji Yamamoto 、Tom Ford等世界で活躍しているデザイナーを輩出しており、そういう環境に憧れてParsonsに入学しました。

――ニューヨークでファッションを学ぶのはハードな日々だと想像されますが。

RIKA:Parsonsに入ってから、授業の厳しさは想像以上でした。ファッションに興味があるだけではデザイナーになれません。Pasons在学中、徹夜で作品を作るのは普通です。そういうハードな日々を過ごしていくためには、ファッションに対する情熱と強靭な精神力が必要です。過酷だけれども、私にとって、Parsonsでの4年間は人生で一番大きく成長する時間だったし、その4年間の経験は一生残ると思います。Parsonsは、学生の能力や可能性を最大限に引き出してくれる大学です。

――ParsonsにはRIKAさんのほかには日本人はいました?アジア系ではどんな国の人が多いんでしょうか?

RIKA:Parsonsの学生で日本人は少ないです。海外からの留学生で一番多いのは、中国人と韓国人です。なぜ、日本の若い人が少ないのかはわかりませんが、もっと多くてもよいと思います。

――フロイトに興味を持ったのはいつごろから?

RIKA:小さい頃から、心理学が好きで、『精神分析入門』をはじめ、フロイトの本を何冊も読みました。フロイトの理論にはとても興味があります。

――ユニセックスにはいつごろから興味を持っていた?

RIKA:大学2年生の時から、ユニセックスなスタイルに興味があります。大学2年の学期末の作品は女性服でした。この女性服作品のモデルさんは男性を起用しました。女性服を男性が着るユニセックスな作品は先生から高い評価をいただきました。既成概念の男女性別から解放され、自由になる、見えない性別界線の多様性ある作品をデザインしていきたいと考えています。

「WWD」が紹介したRIKAさんの作品の一部
「YOKO Mag」に掲載されたRIKAさんの作品

――ユニセックスのファッションは大いに可能性があると思いますが、ニューヨークあるいはアメリカではユニセックスはどう受け止められていますか?

RIKA:アメリカでは近年、多様性(diversity)を認める意識がどんどん強くなっていて、そこには個性の尊重があります。人はみな違っていてよい。だからファッションも様々なスタイルがあります。今後は、ユニセックスファッションあるいはジュンダレス(男女中立)ファッションが流行し、定着、一般化するのではないかと考えています。

――日本でファッションを学んでいる学生さんに何か伝えたいことはありますか?

RIKA:今、アメリカで日本のデザイナー川久保玲、山本耀司、三宅一生等の影響力を受けて、日本の文化、日本のファッションスタイルが好きな若い人が増えてきています。特にParsons在学中の学生さんは日本の文化が好きで、日本に留学したいという人が多いのです。その一方、ニューヨークで日本の若いデザイナー、ファッションを学んでいる日本人学生は本当に少ないです。ファッションに国境はないと思います。デザイナーにとって、デザインの技術力より、グローバル感覚や世界に自己作品をアピールする能力が必要です。

――これからの活動予定は?(個展やショーでの展示その他の予定)

RIKA:今年の10月に上海国際ファッションコレクションが開催されます。参加する予定ですが、現在検討中の段階です。

今年5月発売された「上海画報」でも大きく取り上げられた

 RIKAさんは来年、ニューヨークで自分のブランドを立ち上げることを目指している。RIKAさんへの連絡先は以下のとおり。ウエブサイトやインスタグラムでもその動向を知ることができる。

E-mail:rikakonishi0916@gmail.com
ウェブサイト:http://Rikakonishi.com
Instagram:rikaakonishi

■Editor’s Note
若くしてニューヨークでファッションデザイナーとして活動するRIKAさん、「ファッションに国境はない。デザイナーにとって、デザインの技術力より、グローバル感覚や世界に自己作品をアピールする能力が必要」というその言葉に「外に向かう力」を感じる。その作品に流れるユニセックス、ジェンダレスというコンセプトは今後の人類のあり方をも示唆している。それは「既成概念の男女性別から解放され、自由になる、見えない性別界線の多様性ある作品をデザインしていきたい」、この言葉によく表されている。一方で、フロイトに興味を持っているということに驚かされた。若い人から「フロイト」の名を聞いたのは初めてかもしれない。若き日本人デザイナーとして「これから何をやるか」注目していきたい。(清家輝文)